朝日新聞の連載記事「死ぬな! 自殺3万人時代に」が、10日に終わったが、19日、「読者の投書から」が掲載された。
一方、同日「自殺予防 44都道府県市が施策」の記事が掲載された。
この中で、他の国では「うつ病対策はごく一部」として、いかにも、うつ病対策だけではだめだというような論調のコメントがある。今は、時間がないので、詳しくは、論じないが、このようなことをいう人は誤解している。種々の出来事、原因、社会の仕組み、エゴイズムから、うつ病、自殺がおきるから、そのような背景までも視野に入れて対策をとれ、というのが、「うつ病対策」なのである。これまで(今なお)は、精神科医中心に、「うつ病は必ず治る。医者に行け」という。これだけではだめだ、もっと、広範なうつ病対策が必要である、というのが、「うつ病対策」である。薬物療法だけでは不十分なうつ病・自殺にどう対策をとるのか、である。
「読者の投書から」の記事では、読者の体験が掲載されているが、ここでも、薬物療法だけでは不十分だということをみたい。
- 会社員女性33歳、2年近く精神科に通ったあげく、自殺未遂2回。この人はこういう。
「だから、社会で死のうとする前に精神科へ」と決まり文句のように言われるのが気になる」
「単純に「病院へ」と促しても、「なんだこの程度か」となり、治療は進まないでしょう。」
(管理者=精神科医での相談体制も重要だ。短い診療で、薬物だけを投与して終わりというのではいけない。同じ病院に、新設の「医療心理士」がいて、時間をかけて、うつの背景の把握、心理的なカウンセリングを併用すれば、改善されるだろうか。そのカウンセリングの力量が問題となる。私はカウンセリングを行っているが、初回は、2時間かけて、背景を聞き、今後のカウンセリング方針を説明するのに、2度とこない人もいる。カウンセリングを継続すれば、治る可能性があるのに、動機づけがむつかしい。)
- 会社員男性、24歳、借金で自殺決意。(この時、うつになっている)。母からの電話で中止、母が返済してくれた。
(管理者=借金苦による「うつ病」は、薬物療法だけでは治らない。こういう場合には、うつになる前に、あるいはなってから、「借金苦」について相談を受けるところに行って、相談する。そういう仕組みが必要である。このケースは、最初から、母に相談すべきであった。対人関係療法では、うつ病になる人には、家族(重要な他者)に相談しない、会話しない場合があるという。家族との会話があれば、家族が気がつくことがある。こういう場合、カウンセリングは家族との関係を修復する。この場合、家族が肩代わりしたことで解決できたが、家族でも返済できない状況では、うつ病が治らない。そうすると、もっと、借金問題を専門的に助言してくれるところが必要である。そういう問題の専門家と、そして、うつ病の病理についてはその専門家も同時にケアするという自殺予防の総合センターのような組織が欲しい。両方、同時並行でケアしないと、途中で、自殺されるおそれがある。)
- 主婦、44歳。多重債務者の心のケアのボランティアをしている。自分がそういう悩みから、リストカットを繰り返していた。ボランティアの支援を受けて立ち直ったのがきっかけ。 ところが、昨年夏、自分の母が自殺した。年金を担保に借金していた。それを知り、法的手続きを進めていた矢先だった。「借金苦などで死ぬ必要はないと、今後も訴えていくつもりです。」という。