「死ぬな! 自殺3万人時代に」=連載終わり・社説
朝日新聞の連載記事「死ぬな! 自殺3万人時代に」は、10日に終わり、11日、社説でまとめられた。
この中で、自殺防止のために、地域住民や県などが取り組んでいる例も簡単に紹介された。
- 1、新潟県松之山町(現在、十日町市)
これは、5回目に紹介された。
- 2.青森県、秋田県は相談窓口などの一覧表を全戸に配っている。
- 3.個人で自殺防止にかかわっているボランティア
- (3−A)「いのちの電話」は、全国で7千人のボランティアの人たちが、電話相談を受けている。
- (3−B)秋田市のボランティア。自己破産した経験のある人が、中小企業の経営者の相談を受けている。
- (3−C)福井県の東尋坊は飛び込み自殺が多いが、そこで、元警察副署長が相談所を開いている。
以上のような取り組みがあるものの、対策の遅れを指摘している。
- 1.「町のイメージが悪くなる」として対策を渋る自治体もある。
- 2.県が「自殺予防」とはっきりうたって対策を立てていた県は7つしかなかった。
最後に、自殺を引き留めることの大切さを訴える。
「秋田県で先月末、自殺サイトで知り合い、練炭を買いにいく若い男女が警察にみつかった。高校1年の女性は「自殺できずに残念。でも失敗に終ってほっとした。不思議な気持ちです」と話した。」
以上のような対策と対策の遅れを指摘して、次の点が社説の最も重要な指摘のように思う。
「「うつ」への対策が柱だ」。自殺しようとする人は様々な事情を抱えているが、その多くは、うつ病やうつ状態に陥っている。相談や治療をしやすい態勢をつくることで、自殺を減らそうというのだ。
方向は間違ってはいない。しかし、掛け声だけで、なかなか実行できていないのが現実である。政府は自殺の原因や背景をもっと調べるとともに、すでに取り組んでいる自治体や民間の活動を助け、広げることに力を入れた方がいい。」
以上が、社説の要旨である。この最後に引用した部分が、重要であると思う。自殺は、背景に「うつ病」がある。その背景には、借金、リストラ、過労、がんや他の難病から起きる心理的な苦しみ(それからも「うつ病」になる)、介護疲れ、いじめ、孤独、対人恐怖・パニック障害などの心の病気が治らない、内科医のうつ病の診断見落とし、薬物療法一辺倒のうつ病治療、カウンセラーのうつ病カウンセリングのノウハウ不足、等々、種々の背景がある。
こういう種々の背景を推測してみると、うつ病、自殺防止の対策は、全く不十分である。連載で紹介された対策例でも、根本的な対策につながっていないものも多い。「点」と「線」で言おう。自殺しようとしている人を「引き留める」のは重要だ。だが、その「点」で、自殺を留めても、「うつ病」「うつ」状態が治癒したわけではない。その「点」から「線」へつなげていかなければならない。そうでないと、その人は、しばらく生き延びるが「うつ病」が治らないと、別のところに行って、自殺する。自殺未遂は繰り返されるのだ。「点」だけの対策ではだめだ。
自殺をひきとめたら、その次に、根本対策を行う組織、ボランティアのもとに連絡を取り、フォローする仕組みを作る必要がある。
その根本対策をすすめるところが、必ずしも、うまくいっていないので、その質の改善が、また、重要な課題である。これも、早く改善対策をとってもらいたい。次のような点である。
- 内科医、かかりつけ医などが、うつ病を見落とすので、うつ病の治療開始が遅れる。
- 薬物療法で治らない「うつ病」患者がいる。そのような時に、一定の条件になったら、薬物療法を中止し、心理療法、カウンセリングなどをすすめるようなガイドラインがない。長期間、薬づけの状態となる。